【似ている?】国家一般職の論文は東京都庁とどう違う?【出題形式を比較】
国家一般職と東京都庁、たしかに論文の出題形式が似ていますね。
資料(グラフ、図表)が複数あって、設問が(1)と(2)に分かれているのは共通です。
なら、都庁の論文対策をしていれば国家一般職にも使い回せるのでしょうか?
目次
国家一般職と都庁の論文、その違いとは?
両者の設問を比べてみましょう。
【東京都Ⅰ類B 2023年】
(1) 別添の資料より、正しい情報をタイムリーに伝える「伝わる広報」を展開するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ。
(2) (1)で述べた課題に対して、都はどのような取り組みを進めるべきか、あなたの考えを述べよ。
なお、解答に当たっては、解答用紙に(1)、(2)を明記すること。
【国家一般職 2023年】
我が国においては、文化財の滅失や散逸等の防止が緊急の課題であるとされ、茶道や食文化などの生活文化も含め、その保護に向けた機運が高まってきている。
文化財保護法については、平成 30 年に、地域における文化財の総合的な保存・活用や、個々の文化財の確実な継承に向けた保存活用制度の見直しなどを内容とする改正が行われた。また、令和3年に、無形文化財及び無形の民俗文化財の登録制度を新設し、幅広く文化財の裾野を広げて保存・活用を図るなどの改正が行われた。
このような状況に関して、以下の資料①、②、③を参考にしながら、次の(1)、(2)の問いに答えなさい。
(1) 我が国が文化財の保護を推進する意義について、あなたの考えを述べなさい。
(2) 我が国が文化財の保護を推進する際の課題及びそれを解決するために国として行うべき取組について、あなたの考えを具体的に述べなさい。
パッと見て違うのは、都庁がいきなり (1) の設問なのに対して、国家一般職では数行の問題文がある点ですね。
問題文は答案のヒント
この問題文は資料の解釈や答案の切り口のヒントです。しっかり読みましょう。
(1) 「我が国が文化財の保護を推進する意義」の部分は、「文化財が滅失・散逸したらどうなるか」という視点で書くことが求められています。問題文を読まずスルーすると、「茶道の家元の収入が減る」などの小さい話を書いてしまいがちなので気をつけましょう。
(1) で「問われること」は毎年違う
東京都の場合、(1) の設問は「〇〇のために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ」と文言が毎年同じです。したがって(1) の答案は最後に「△△が都の課題である」で締めます。
※「課題」という用語を「問題」のことだと思っている方は、こちらの記事で正しく理解してください。
→【論文試験】知っているようで知らない「問題」「課題」「取組」の違い【基本用語】
これに対し国家一般職は (1) の文言が毎年違います。
2023年 我が国が文化財の保護を推進する意義について、あなたの考えを述べなさい。
2022年 カーボンニュートラルに関する取組が我が国にとって必要な理由を簡潔に述べなさい。
2021年 我が国の子どもの貧困問題が社会にどのような影響を及ぼすのか、子どもの貧困に関する現状を踏まえながら、あなたの考えを述べなさい。
2020年 我が国が健康寿命の延伸に取り組む必要性について、あなたの考えを述べなさい。
「意義」とか「影響」とか「必要性」とか、バリエーションがあります。当然そのときの「問い」に対して臨機応変に答え方を変えなければなりません。
「影響」が問われているのに都庁のノリで「行政の課題」を書いてしまうと、「問われたことに答えていない」として大減点を食らうので気をつけましょう。
資料はいくつ触れればいい?
ダメです。与えられた資料には全部言及しましょう。
都庁の場合、(1) ですべての資料に言及します。すべての資料を踏まえた上で「都の課題を見つけろ」という出題なので。
これに対し国家一般職では必ずしも (1) にすべて詰め込まなくても大丈夫です。
たとえば2021年の「子どもの貧困」では、資料①〜③の構成はこんな感じでした。
資料① 子どもがいる現役世帯の貧困率等の年次推移
資料② 子供の大学等進学率の内訳(2017年)
資料③ 子供の貧困に関する指標
設問は「(1) 我が国の子どもの貧困問題が社会にどのような影響を及ぼすのか、子どもの貧困に関する現状を踏まえながら、あなたの考えを述べなさい」なので、資料②と③を使って「貧困家庭の子どもたちが将来どうなってしまうか」を説明する必要があります。
でも資料①は子ども自身というより親に関するデータなので、(2) で取り組みを述べるときに使うのがベストでしょう。
もし心配なら、(1) で資料すべてに触れてしまっても大丈夫です。それも無難です。
でも、より出題意図に沿った答案を書きたいなら、資料を (1) と (2) にどう振り分けるかを考えてみましょう。
国家一般職・一般論文の文字数は?
都庁の論文は (1) と (2) 合わせて「1000字以上1500字程度」、そのうち (1) が「200字程度」という指定があります。(2) は800〜1300字ということになりますね。
一方、国家一般職では具体的な字数指定はありません。
でも内容的に (1) を300字程度、(2) を700字以上で書くのがいいでしょう。どちらもこれ以下の字数だと内容が浅くなってしまいます。
まとめ
東京都と国家一般職の論文試験の違いをまとめました。
「都庁のパターンを使い回そう」なんて考えず、国家一般職の出題に合わせた答案を書きましょう!!
東京都Ⅰ類B | 国家一般職 | |
---|---|---|
出題形式の共通点 | 複数の資料 設問は (1), (2) の2つ |
複数の資料 設問は (1), (2) の2つ |
問題文の有無 | 問題文なし | 数行の問題文 |
(1) で問われること | 毎年「都の課題」 | 「意義」「必要性」「影響」など毎年変わる |
資料への言及 | (1)ですべての資料に言及する | すべての資料に言及するが、(2) で触れるべき資料もある |
試験時間 と文字数 |
1時間30分 (1) 200字程度 (2) 800〜1300字 |
1時間 字数指定はないが、 (1) 300字程度、(2) 700字以上が理想 |