2024.03.04
公務員試験

【東京都の論文対策】資料の解釈で答案が2つに割れる?!【Ⅰ類B 2023年】

東京都職員採用試験の論文といえば、グラフが多いことが特徴です。

実はこの資料の解釈の時点で受験者の半数がしくじっていることをご存知でしょうか?
(1)の資料説明を間違えてしまっては、(2)でどんなに頑張っても「的はずれな答案」になってしまいます。
都庁の論文は資料解釈が命!
グラフの「正しい読み取り方」を学びましょう。

東京都Ⅰ類B 2023年の資料問題

問題
(1)別添の資料より、正しい情報をタイムリーに伝える「伝わる広報」を展開するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で完結に述べよ。
(2)(1)で述べた課題に対して、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ。

2023年のⅠ類Bは資料1〜3の3つのグラフが出題されました。
(例年は資料1と資料2の「2つ」でしたが、資料1の中にグラフが2つあったりして、実質グラフは3〜4つでした)
それでは3つの資料を順番に見ていきましょう。

資料1 東京都のグラフには「意外な事実」が隠れている?!

資料1は「今後力を入れて欲しい広報媒体と都政情報の入手経路」というアンケート結果です。

いまの人たちはSNSですよね! ほら、LINEもTwitterもFacebookもインスタグラムも実際の利用に対して要望が上回っています!

グラフを読むときの基本ルールは「一番大きな差を見る」こと。小さな差(誤差)ではなく有意差に注目します。(とはいっても、統計学での厳密な有意差ではなく、「パッと見て明らかに違う」というレベルです)

たしかに左右のグラフを比較すると各種SNSは要望と実際に差が見られますが、
左右それぞれの棒グラフを見ると、明らかに「飛び抜けたデータ」があります。

広報紙、テレビ・ラジオ、新聞が他の媒体に比べてダントツで高い。実際の利用も今後への要望も。

つまり資料1は「いまだにアナログメディアが主流で、SNSはあまり利用されていない」と解釈するのが正解といえます。

うーん、言われるとたしかにテレビや広報紙が多いんだけど、いまの時代に広報といったらSNSでしょ? 実感と違うなあ。。。

実感と違う、意外なデータ。
実はこれこそが東京都の資料問題の特徴なんです。先入観で資料を見ると、この「意外な事実」を見落としてしまう。それゆえに「受験者の半数がしくじる」ことになるのです。

資料2 解釈は複数の資料で裏付けられる

資料2は「これからの都政の進め方について都民が望むこと」という世論調査の結果です。

「都民の意見や要望をよく知る」「予算を効率的に執行する」「都政情報をわかりやすく提供する」あたりが多いですね!

パーセンテージだけならそう見えますが・・・

このグラフ、単純な棒グラフではありません。3年間の推移を示しています。
すると、このグラフの中で唯一「3年間でもっとも変化している項目」がありますね。

「デジタル化・簡素化を進める」が40.4%から29.6%に減っています。
上の3項目がどんぐりの背比べなのに対し、このグラフの中で一番顕著な動きではないでしょうか。

つまりこのグラフは「デジタル化を求める声は減っている」と解釈すべきなのです。

これを踏まえてもう一度資料1を見てみましょう。
もし資料1の主旨が「SNS」だとすると、資料2の「デジタル化を求める声が減っている」ことと矛盾します。
資料1、資料2を合わせて「デジタル、SNSは主流ではない」という解釈の方が自然ですね。

資料3 「コロナ禍で伸びた」は注目すべき?

資料3は「都政情報の充足状況」の年次推移です。

令和2年に急に増えていますね。これはコロナ禍でワクチンや医療機関の情報が求められたからに違いない!

ここ8年分くらいのグラフなら、令和2年の突出が出題意図かもしれません。
でも、平成7年(1995年)から令和3年(2021年)までの27年分を並べているということは、全体での傾向を先に見るべきですね。
そうです。充足状況は年々下がっています。
これが「都が広報に力を入れるべき理由」にもなるわけですね。

 (1)の200字をどう書くか?

問題
(1)別添の資料より、正しい情報をタイムリーに伝える「伝わる広報」を展開するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ。

(1)では、まず各資料の説明をして、最後に「都の課題(目指すべき方向性)」をまとめます。
当然、資料の解釈が違えば「都の課題」も違ってきます。

【ガッカリ答案】
資料1では今後力を入れて欲しい広報媒体として各種SNSが期待されていることがわかる。また資料2では「都民の意見や要望をよく知る」「予算を効率的に執行する」「都政情報をわかりやすく提供する」などを望む声が多いことがわかる。さらに資料3を見ると令和2年に都政情報の充足状況が急に上がっている。これはコロナ禍でワクチンや医療機関に関する情報を都民が求め、都がその期待に応えたことを意味する。以上より、SNSやアプリなどのデジタル技術を駆使してわかりやすい情報提供をすることが都の課題といえる。

資料1で「SNSに期待」だけに注目してしまうと、都の課題も「デジタルを駆使して」という方向性になってしまいますよね。
すると(2)も「見やすいホームページ」「使いやすいアプリ」というデジタルの技術的な話が中心になりがちです。(すでにやっているSNSの施策を「もっと進めよう」という、当たり前すぎる内容に)

これに対し、資料1で「アナログが主流」に気づいていると(1)はこうなります。

【スッキリ答案】
資料1より、都政情報の入手経路としてテレビと都の広報紙が多く利用されているのに対しSNSはまだ活用されていないことがわかる。また資料2を見ると、行政手続きのデジタル化・簡素化を望む声が減っているのに対し、都民の意見や要望をよく知ってほしいという声は依然として多い。そして資料3より、都政情報の充足状況は全体的に下がってきていることがわかる。以上より、デジタル・アナログにこだわらず柔軟に都民のニーズに応えることが都の課題であるといえる。

これなら(2)はデジタルもアナログも含めて「都民に求められるコンテンツをどう作るか」という中身の話になります。

答案の「方向性の違い」で評価はどれだけ変わる?

この時代、どこの自治体もSNSやホームページでの情報発信はしています。
でもぶっちゃけ、あまり住民に届いていないのが実情ではないでしょうか?(自治体からのLINEの通知、無視してません?)

そうだとしたら、「そもそも誰に何を伝えるのか」という基本を考えることが「伝わる広報」を考える上では避けられないはずです。

すでにやっているSNSを「もっと進めよう」という答案を書く人と、
そもそも「都民に求められる情報とは何か」を論じる人。

都の職員として将来有望なのはどっちでしょう???

まとめ

①受験者の大半が(1)で「不正解」を書いている
②グラフは「一番大きな差」に注目する
③「数量」か「変化」か、グラフをよく見て判断する
④東京都のグラフには「意外な事実」が隠れている
⑤(1)は資料の説明をしてから「都の課題」をまとめる

(2)の1000字をどう書くかは、次の記事で!↓↓

【東京都の論文対策】(2)は「第一段落に何を書くか」が高得点のカギ【Ⅰ類B 2023年】