2024.03.07
公務員試験

【東京都の論文対策】(2)は「第一段落に何を書くか」が高得点のカギ【Ⅰ類B 2023年】

前回の記事では東京都Ⅰ類B 2023年の問題を解説しながら(1)の書き方、資料・グラフの解釈についてお伝えしました。

【東京都の論文対策】資料の解釈で答案が2つに割れる?!【Ⅰ類B 2023年】

今回は(2)「(1)で述べた課題に対し、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ」の書き方です。

実は東京都の(2)、第一段落に何を書くかによって受験者の答案が3種類に割れるんです。高評価を得るのはどのタイプでしょう?

初心者がよく書く答案

問題
(1)別添の資料より、正しい情報をタイムリーに伝える「伝わる広報」を展開するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で完結に述べよ。
(2)(1)で述べた課題に対して、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ。

まずは(1)のおさらいから。
資料1〜3を踏まえた「伝わる広報のための課題」はこうでした。

「以上より、デジタル・アナログにこだわらず、柔軟に都民のニーズに応えることが都の課題であるといえる」
(「SNSを駆使しよう」がNGである理由は前回の記事をご覧ください)

(1)をここまで書けたという前提で、(2)に進みましょう。

いきなり「都の取組」系

よくある答案の1つがこのタイプです。

【ガッカリ答案①】
正しい情報をタイムリーに伝える「伝わる広報」を展開するために都が進めるべき取組は、第一にテレビ・新聞・広報紙などのアナログ媒体に力を入れること、第二にSNSなどのデジタル技術をもっと普及させること、そして第三に都民のニーズをよく調査することである。以下、そのための具体的な取組を述べたい。
第一に、都政情報を発信するテレビ番組を拡充することである。現在、テレビ朝日では平日昼13時45分から13時50分まで「東京サイト」という番組を放送している。ほかにもテレビ東京では「東京交差点 ONE MOMENT」や「東京GOOD! TREASURE MAP」、TOKYO MXでは「東京インフォメーション」などの番組がある。このような番組をもっと増やし、放送時間も伸ばすべきだ。

「都はどのような取組を進めるべきか」という設問に対し、冒頭から「都の取組」をのべています。たしかに設問の指示には従っているように見えますが・・・

受験生であるみなさんにはこの書き方、おすすめしません!

なぜなら、取組の提案だけで1000文字埋めるのはものすごく大変だからです。広告クリエイターのような発想のプロでもない限り、1時間で1000文字分のアイデアをひねり出すというのは非現実的です。

そのため受験生の多くは何を書いてしまうか?
すでに都がやっている施策を並べて、「これをもっと進めよう」とお茶を濁してしまうわけです。
これでは「あなたの考え」にはなりません。

それに、よほど知識がないと施策で1000文字埋めるのも大変ですよね。
(予備校の「模範解答」にこういう答案が多いのは、先生が行政に詳しいプロだからです)

資料説明のくり返し系

こちらも初心者の答案によく見られるパターンです。

【ガッカリ答案②】
(1)で述べたように、資料1ではテレビや紙媒体が都政情報の入手経路として多く活用されている。SNSは今後力を入れて欲しいという要望は多少あるものの、実際にはほとんど活用されていない。また資料2ではデジタル化を望む声は減っている一方で、都民の意見や要望をよく知ることや予算を効率的に執行すること、都政情報をわかりやすく提供することが望まれていることがわかる。さらに資料3を見ると都政情報の充足状況が年々下がっている。令和2年だけ増えているのはコロナ禍で医療機関やワクチンについて知りたい人が多かったためだろう。(1)でも述べたように、都民の意見に耳を傾けながら伝わる広報を展開していくことが都の課題だといえる。
以上の課題のために都がやるべきことは・・・

(1)で書いた資料の説明を(2)でもくり返しています。たしかに「第一段落は問題提起」とよく教わりますから、「問題提起=(1)で書いた都の課題」と考えたのかもしれません。

でもこの答案、採点者には「字数稼ぎ」と見なされてしまいます!

すでに書いたことをくり返しているということは、もっと書かなければならないことを書き忘れているということです。
(2)の第一段落に「書かなければならないこと」とは何でしょう?

高評価の(2)は第一段落が違う

1000字の論文は三段落構成で

論文の段落構成には諸説ありますが、基本的には三段落構成で書くのがおすすめです。

第一段落:問題提起(なぜその課題が重要なのか)300〜400字
第二段落:原因(なぜそれがうまくいっていないのか)300〜400字
第三段落:解決策(都は何をするべきなのか)300〜400字

「1000字を埋める」と考えたら気が遠くなりそうですが、「300字の話を3つ並べる」なら書けそうな気がしませんか?

なぜその課題が大事なの?

三段落構成の中で最も力を入れるべきなのは、第一段落の問題提起です。
ここでは、資料にも設問にも(1)にも書かれていなかった大問題を提起しましょう。

それは、「都が広報に力を入れないと、誰がどう困るの?」です。

そもそも、誰に何を伝えるの?
子育て世代には保育園の情報、働く人は雇用に関する相談窓口、中小企業は公共事業の入札情報・・・。「誰に」「何を」を具体的に説明すると書くことはどんどん出てくるはずです。

都がやらないと、どうなるの?
上記の情報はどれも都民や事業者の命とお金を守るための情報です。もし都が広報をしなかったら、または都の広報にみんなが気づかなかったら・・・
おそらくSNSで不確かな情報やフェイクニュースが飛び交うことでしょう。

【スッキリ答案 第一段落】
都民の暮らしと経済活動を守り都政への理解を得るために、都が「伝わる広報」に力を入れることは重要である。たとえば子育て世代は保育サービスや学校、住宅などの情報を求め、高齢者や障害者は福祉施設や福祉サービスの情報、また企業や個人事業主は補助金や入札の情報を必要とする。都民全般に向けた情報も災害や医療の情報から都議会の内容まで幅広い。これら都が発信する情報には都民の生活や生命に関わる内容も多いが、SNSや一般人によるまとめサイトでは不確かな情報やデマ、フェイクニュースも溢れていることが近年問題視されている。実際、コロナ禍でのワクチンに関するデマや、能登半島地震における虚偽の救助要請など、SNSの普及によって虚偽の情報の影響力は大きくなっている。そのため都の広報が「信頼できる発信元」と認知され頼りにされることは、都民の暮らしと経済活動を守るためにも重要である。

ここまで約380字。
「都が広報に力をいれる必要性」を論じてから問題解決に進む受験者と、ここをすっ飛ばしていきなり「都の取組」を並べる受験者。
論理的な思考力を評価されるのはどっちでしょう???

ぶっちゃけ、うまくいってないでしょ?

次は第二段落「なぜそれがうまくいっていないのか?」です。原因がわからなければ、対策の方向も定まりませんからね。

「うまくいっていない」って、どのように?
行政の情報を知らないために不利益を被っている人を例に挙げるといいですね。助成金の情報を知らないために損をしている人とか。

行政の情報が届かないのはなぜ?
公務員を目指すみなさんなら日頃から行政情報に関心あるかもしれませんが、それ以外の人たちの気持ちになって考えてみましょう。SNSに行政からの投稿が流れてきたとき、いちいちじっくり読むでしょうか?

【スッキリ答案 第二段落】
しかし行政の情報発信が十分に伝わっているとはいえないのも事実である。たとえば低所得者や母子家庭向けの支援サービスがあっても、対象世帯がその存在を知らず申請すらしていないというケースは多々ある。これは行政の情報というものが自らアクセスしないと手に入らず、多くの都民はその存在すら知らずにいることが原因である。テレビやラジオでさえ、そのとき興味がなければ聞き流されやすい。ましてやSNSやインターネットは自分の好みの情報を選ぶことができるメディアであり、そこでは娯楽やコミュニケーションが優先される。興味を引くものでない限り、行政からの情報発信はいわゆる「スルー」または「ブロック」されがちである。このため日頃から行政と市民の関係性を築くことができず、あるとき生活に関する情報が必要になっても行政が情報発信していることに気づかず他のメディアを検索してしまうのである。

興味を引く内容でないとスルーされる。
当たり前といえば当たり前の話です。この点を考えずにSNSなどのツールを工夫しても空振りしがちですよね。

具体策は最後の300字で十分

行政の情報が届かない原因まで分析できたら、いよいよ解決策です。
「いきなり取組」系の答案では、1000字まるまる解決策を書かなければなりませんでした。
でも「問題提起/原因/解決策」の三段落構成なら解決策は300字以上で済みます。
しかも、やみくもに提案を並べるよりも「地に足の着いた提案」になるはず。

解決の方向性は?
もちろん「都民の興味を引く内容を発信しよう」ですよね。「興味を引く」というのは面白コンテンツとは限りません。人は「自分に関係ある話」と思えば興味をもつものです。

具体的には?
「行政はこれやってます」ではなく、都民の疑問や不安に答えるQ&Aなら、興味を持つ人も増えるかもしれません。コンテンツの都民ファーストです。

【スッキリ答案 第三段落】
したがって、都が「伝わる広報」を展開するためには、都政に関心の薄い層も含め幅広い都民と接触を持ち続けることが必要である。具体的には一方的にPR内容を送りつけるのではなく、都民の興味関心を引くようなコンテンツを定期的に配信することが挙げられる。たとえば「出産の費用は?」「都内の最低時給は?」などのよくある質問をQ&A形式で記事や動画にして配信すれば、その記事から都のポータルサイトなどへ誘導することができる。また検索ワード連動広告の仕組みを使えば、困りごとについて検索した人に都の情報を上位表示させることができる。さらに、これらの記事やポータルサイトなどへ寄せられたコメントを元に新たなQ&Aを作ることでよりユーザーの求める内容に近づけることが可能である。こうして都民のニーズに合わせたコンテンツをテレビや新聞にも反映させることであらゆる媒体でより「伝わる広報」が実現できると考えられる。

まとめ

①いきなり取組から書き始めない。
②(1)で書いた資料説明を(2)でくり返さない。
③第一段落は「都が取り組まないと誰がどう困るのか?」を300〜400字で。
④第二段落は「なぜうまくいかないのか?」を300〜400字で。
⑤第三段落は「都は何をするべきか」を300〜400字で。

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